ゲスト | 矢野宏さん(新聞うずみ火代表、ジャーナリスト) |
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パーソナリティ | 西谷文和(ジャーナリスト) |
テーマ | 大阪大空襲と大阪ジャーナリズム |
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■このままでは死ねない – 民間の空襲被害者に補償を
B29が100機以上来た「大阪大空襲」。1945年3月13日から終戦前日の8月14日まで、8度にもおよぶ爆撃が行われました。
この空襲の民間の被害者は、旧軍人・軍属、その遺族とは異なり、国から何らの補償も受けていません。戦争被害者への補償が広がるなか、民間の空襲被害者は取り残されたままです。
国の補償を求めた「大阪空襲訴訟」を追いかける矢野さん。「戦後60年以上が経ち、平均年齢は80歳代。原告はこのままでは死ねないという思いで立ち上がっている」。
しかし、一審、二審ともに敗訴し最高裁に上告中。東京訴訟も最高裁で原告の訴えを退ける判決が確定し、厳しい状況が続いています。
■避難したら罰則、家に防空壕 – 被害を拡大させた政府の無策
被害者の方々による、大空襲の体験を生々しく語ったインタビュー音声からは、空襲の別の側面が浮かび上がります。
当時、防空法という法律によって、家長ら大人たちはどんな空襲にあっても逃げてはならず、消火に務めることを強いられました。矢野さんは「違反すれば1年以下の懲役か、500円以下の罰金(当時の教員の初任給が55円)。こうした背景が被害を拡大させた」。
一方、避難先となる防空壕も家の中に作らされたと言います。「これは事実上、逃げずに消火活動しろということを国が強制したもの。空襲の被害は避けられなかったのではなく、当時の政府の無策が招いた人災だ」。
■参院選、橋下市政報道ぶった斬り – 大阪ジャーナリズムとは
弱者目線、反骨精神を貫き、また権力批判を柱とする「大阪ジャーナリズム」の復活を目指したジャーナリスト・故黒田清さん。矢野さんと西谷にとって共通の師匠であり、黒田さんが亡くなった後、矢野さんは「新聞うずみ火」を設立しました。「新たな火種となる炭火のように、反戦・反差別を次代につなぐ思いを込めた」。
そんな二人がジャーナリズムの現状について、語り合いました。参院選について矢野さんは、「争点は憲法でありTPPであり原発。しかしマスメディアはこぞってねじれ解消。生活者の立場に立った報道がなかった」。
また橋下市政をめぐる報道について、各社とも市政記者クラブの記者を増員して対応。「橋下さんはいろんなアドバルーンを上げるため、“特オチ”(特ダネを逃すこと)してはならないという理由。自由に動ける遊軍記者まで市政担当に取られ、人権や戦争といったテーマが手薄になっている」。
■奇形動物が続出…モンゴルのウラン採掘場の実態
もうひとつのテーマは、モンゴルにおけるウラン採掘場の実態について。この問題に詳しい大阪大学の今岡良子准教授に電話をつなぎました。
仏アレバ社系企業が運営していた、モンゴル東南部でのウラン試験採掘場。この付近では去年から今年にかけて、1,000頭以上の家畜が死亡、頭が2つある子羊や足が3本しかないラクダなど、奇形の動物が生まれるケースが出ています。
国立の関連機関が述べ約1,000人で調査、ウランか重金属が原因とする結果を出しましたが、モンゴル核エネルギー庁は総合的な調査研究が終わっておらず時期尚早として、一度地元に出された緊急避難命令を解除。5月1日、政府は原因がウランではないとする最終結論を出しましたが、地元の遊牧民らがデモや署名集め、また試験採掘場を包囲するなどして抗議。
一方、安倍総理はモンゴルを3月に訪問。その裏にはウラン採掘から核廃棄物の処分まで請け負う「包括的燃料サービス」の拡大と、モンゴルを核のゴミ捨て場にしようとする疑惑が見え隠れします。
今岡准教授は「2011年7月の共同通信は合意文書があると報じている。そこには包括的燃料サービスによって原子力利用の拡大が可能になるとあり、可能性は十分にある」と指摘しました。
■利益は米国に・対米従属の原子力協定 – 小出裕章ジャーナル
アメリカから日本への核燃料の調達や再処理の資材・技術導入について取り決める「日米原子力協定」がテーマ。
1988年に現行の協定が発効。小出さんは「日米安保条約、日米地位協定とともに、日本が米国の属国であり、米国の枠組みの中でのみ自由を与えられた協定だ」と指摘します。
またアメリカは日本に、プルトニウムを取り出す再処理技術、核燃料サイクル導入に否定的だったと言います。「核燃料サイクルは核兵器製造サイクルとも言うべきもの。日本はようやく米国の了承を取り付け導入したのだから簡単に手放せないし、米国も了承したことで、自身の思惑のなかで日本を利用できると思っているだろう」。
日本は、アメリカ国内の原発や核燃料の販売先になっているとも指摘。「プラントの特許は米国企業にあり、売れば売るほど儲けられる。利益は米国に、危険は日本に押し付けられる構図。失効する2018年で破棄すべきだし、同様に日米安保条約も日米地位協定も破棄すべきだ と語りました。
ゲスト略歴
矢野宏(やのひろし)
1959年生まれ。愛媛県出身。「新聞うずみ火」代表・フリージャーナリスト。元黒田ジャーナル記者。朝日放送や関西テレビの番組で「ブレーン」をつとめる一方、サンテレビの情報番組「フライブ」やラジオ大阪「ニュースワンダーランド」にコメンテーターとして出演してきた。2002年からは関西大学で非常勤講師として「マスコミ文章実習」の講義を持つなど、なかなかの「マルチ人間」である。主な著書として、『大阪大空襲訴訟を知っていますか』(せせらぎ出版)など。毎週火曜日にラジオ大阪「中井雅之のハッピーで行こう!」、毎週土曜日は「里見まさとのおおきに!サタデー」にコメンテーターとして出演。
- 大阪空襲訴訟原告団・支える会
- 大阪空襲訴訟とは(大阪空襲訴訟原告団・支える会)
- 大阪大空襲(Wikipedia)
- 大阪空襲訴訟控訴審判決「戦争損害受忍論」が復活(1月15日付新聞うずみ火)
- 防空法制下の庶民生活(早稲田大学・水島朝穂氏ホームページ)
- 最高裁で敗訴が確定した東京大空襲訴訟が問いかけたもの(宮武嶺龍谷大客員教授)
- (Googleマップ)
- 新聞うずみ火
- うずみ火日誌
- 2013/07/06 【大阪】緊急勉強会「モンゴルを襲う核のゴミ モンゴル核廃棄物処分場問題は終わっていない」(IWJ)
- モンゴル国CFS構想と東芝とモンゴルの原子力利用(今岡良子・モンゴル情報クローズアップ!)
- モンゴルのウランを買い、モンゴルに使用済み核燃料処分場を造る(同)