第32回「ひとをつなぐ、歴史をつなぐ」

2013年08月19日
ゲスト 朴慶南(パク・キョンナム)(作家、エッセイスト)
パーソナリティ 石井彰(放送作家)
テーマ ひとをつなぐ、歴史をつなぐ
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石井彰】朴慶南さんの話を聴いていると、じわじわと「生きる力」のようなものがわきあがってきます。それは大変厳しく、つらい体験から生まれた彼女の「やさしさと強さ」が伝わってくるからなのでしょう。「私たちはどんなに投票したくてもできない。どうして日本の人の約半分が投票を棄権したのでしょうか?」という彼女の問いかけが、とても胸に刺さりました。
ラジオフォーラム


■やさしさという強さ

朴慶南さんは鳥取県米子市生まれの在日2世。大学進学と同時に本名を名乗ります。全国各地を取材して歩き、「命の大切さ、平和の尊さ」を語り、書き続けてきました。

最新刊の著書『やさしさという強さ』(毎日新聞社)で、触れられているエピソードを紹介しながら、文明は大きいこと、強いこと、速いことを求めるあまり、大切なものを失ってきたのではないかと感じると言う朴さん。

「強さだけでは自然を壊したり、人を蹴落としたり独占したり。人々が安心して心豊かに生きる、そういう社会を目指したい」。

■関東大震災90年、朝鮮人の命を救った大川常吉の勇気

ラジオフォーラム

関東大震災当時、デマを流す者に対して警告する警視庁のビラ(画像はWikipediaから)

今年は関東大震災から90年。ラジオ放送が始まってから88年になりますが、その背景には発災当時、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というデマで在日朝鮮人や中国人が虐殺された事実があります。

そうしたデマを騙されないために、真実を伝えるメディアが必要とされるなかで、ラジオは誕生しました。

デマに踊らされた日本人の暴徒から多くの朝鮮人の命を救ったのが、日本人の警察署長・大川常吉。署内に300人ほどの朝鮮人や中国人の人々を保護しました。

暴徒と化し警察署に押し寄せる群衆を前に、毒が入れられたという井戸水を飲んでみせ、群衆にどうしても朝鮮人を渡せと言うなら自分をまず殺せと一喝した大川。

朴さんは「武器を手にした群衆に立ち向かう勇気、冷静沈着さ、群衆を落ち着かせる知恵。他の人々の痛みをいかに想像できるか、国や民族に関係なく必要とされるものではないか」と語りました。

■新規制基準はバカげている – 小出裕章ジャーナル

ラジオフォーラム

原子力ムラ出身者で占める規制委員会に、実効性のある規制設置を期待できるのか?
(画像はIWJより)

原子力規制員会は昨年10月、原子力災害対策指針では住民避難を従来の半径8〜10km圏内から30km圏内へ拡大しました。小出さんはこれら基準をバカげたものと切り捨てます。「福島事故では、実際は30km以上離れた地域でも猛烈に汚染された。飯舘村は全村避難の状態。30km圏内で被害は収まらないことが事実として示されている」。

また朴さんによる「少欲知足」の言葉に関して、「もっと謙虚になって足ることを知り、豊かに生きられる道を探るべきだと思う」と語りました。

■サハリンからの帰国支援事業

さまざまな市民活動をご紹介する「ラジオのたね」では、NPO法人「日本サハリン協会」理事長の斉藤弘美さんに電話でおつなぎし、日露戦争から太平洋戦争まで日本が占領していたサハリン(当時の樺太)に取り残された日本人の帰国と、帰国後の生活支援などの活動について、ご紹介いただきました。

現在でも100人ほど、日本人と認定されるべき人が残っていると言います。斎藤さんは「8月15日以降にソ連が侵攻し沖縄と並んでの地上戦があったが、その事実がほとんど知られていない。戦後も日本との国交がなく経済成長からも取り残された。そうした事実を知ってほしい」と訴えました。


ゲスト略歴
ラジオフォーラム 朴慶南(パク・キョンナム)
鳥取県米子市生まれ。1972年、立命館大学文学部史学科卒業。 在日韓国・朝鮮人として高校までは日本名新井慶子を名乗っていたが、大学進学とともに朝鮮名の朴慶南に。大学卒業後、構成作家などを経て本格的な作家活動を開始。1992年、第10回青丘文化奨励賞を受賞。『私以上でもなく、私以­下でもない私』、『横浜ルネサンス』、『生きることを励ます。「江東区に夜間中学を!­20年目の願い」講演会全記録』、『クレドサラヤジ それでも生きていかなくちゃ』、『なんとかなるよ、大丈夫』など著書多数。


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