第65回「市民の力で社会を変える」

2014年04月07日

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00:31 オープニング
05:57 市民の力で社会を変える(前編)
15:09 小出裕章ジャーナル/川内原発再稼働の行方
25:08 市民の力で社会を変える(後編)
37:20 難聴者は何を思うのか
47:22 エンディング

Web公開 4月7日(月)
ラジオ放送日 4月4日(金)~11日(金)
※放送日時は放送局によって異なります。くわしくはこちらをご覧ください
ゲスト 鎌田華乃子さん(コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン代表)
パーソナリティ 湯浅誠(社会活動家)
テーマ 市民の力で社会を変える

■市民が社会を変えるには

普通の市民が立ち上がり、その持てる力をコミュニティのために結集し、社会の仕組みを変えて行くコミュニティ・オーガナイジング。

このコミュニティ・オーガナイジングを日本に広める活動をされている鎌田さん(コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン代表)とともに、市民の力が社会を変えていくために、私たちはどう行動したらいいのか、探っていきます。

■難聴者は何を思うのか〜みんなジャーナル

一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会理事長の高岡正さんが電話で出演。高岡さんは、人工内耳を使う難聴者です。「耳の聞こえない作曲家」として知られていた佐村河内守氏の一連の騒動をどのように感じているのか、また、難聴者が日々の生活の中で苦労していること、現在置かれている状況について、ご意見を伺います。

■川内原発優先審査決定〜第65回小出裕章ジャーナル

再稼働に向けた安全審査を優先的に進める原子力発電所として、原子力規制委員会が、鹿児島県の九州電力川内(せんだい)原発1・2号機を 選びました。早ければ今年の夏にも再稼働できる可能性が出てきた川内原発について、小出さんに詳しくお聞きします。


みんなジャーナル書き起こし

湯浅:
この時間はみんなジャーナル、電話インタビューのコーナーです。今日は、聴覚障がいについて、一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会理事長の高岡正さんにお電話でお話を伺います。

高岡さんは、人工内耳を使う難聴者です。今回の出演にあたって、「字幕電話」を用います。この「字幕電話」は、携帯電話、スマートフォンにタブレットを接続することで、かかってきた相手の電話の声が、手元のタブレットに文字で表示されるものです。

ですので、インタビュー中に多少の時間差、間が生じます。ご了承ください。高岡さんよろしくお願いします、どうぞ。

高岡:
はい、高岡でございます。わたしは、生まれつき高熱なもとで失聴した難聴者です。現在は両耳に人工内耳をして生活と仕事をしております。よろしくお願いします。どうぞ。

湯浅:
では、質問させていただきます。耳の聞こえない作曲家として知られていた佐村河内守さんの一連の騒動を、高岡さんはどのように受け止めてらっしゃいますか。どうぞ。

高岡:
はい。ゴーストライターによる、作曲の問題と全ろうで作曲家という二重の詐称が、難聴問題にすり替えられてしまったようで、大変遺憾に思っています。

難聴と難聴者に対する誤解は、広く拡散されて、生活や仕事に困っている難聴者、聴覚障がい者にとっては、本当に尊厳を傷つけられた思いです。日々の苦労が理解をされるどころか、実際は聞こえているんではないかと言われて、悔しい気持ちでいっぱいになっています。どうぞ。

湯浅: 「聞こえたり聞こえなかったりする」という佐村河内氏の発言に対し、ネット上ではたくさんの嘲笑が行われました。難聴とはどういう状態ですか?どうぞ。

高岡:
はい。聞こえは難聴の種類、失聴した原因、話されたときの環境に大きく影響を受けますので、身体障害者手帳の有無にかかわらず、コミュニケーションにとても困難があります。

難聴は、鼓膜や耳小骨などの経路に障がいのある伝音性難聴と、内耳から脳までに障がいのある感音性難聴があります。特に高齢者に多い加齢性の難聴は、感音性難聴です。

この感音性難聴の方は非常に多くて、特に高い周波数の子音が聞きにくいので、音は聞こえても、言葉がわからない特徴があります。例えば、千葉県、滋賀県はオンが似ています。これをチガケンなどと聞き間違えたりすると、何の話かわからなくなってしまいます。ちょうど、方言や外国語を聞いているようなものです。何を言っているか内容がわからないんですね。

また難聴者の聞こえは、生活環境、心身の状態の影響を強く受けるので、ちょっと離れただけで聞きにくくなります。早口や、明瞭でない話し方では、なおさら聞き取れなくなります。電話や事務機器、空調の音がするオフィスの中ですとか、車が行き交う街頭など、うるさいところでは本当に聞き取れません。

ですから、聞こえたと思っていても、実は大変な間違いをしていることが、よくあります。それに難聴者は、自分がどのような難聴なのか、どの程度聞こえていないのか、適切な認識や判断ができません。また、聞こえというのは感覚の問題なので、聞こえの状態を言葉で表してほかの人に説明をすることも非常に難しいので、理解が得にくい障がいだと思っています。どうぞ。

湯浅:
はい。「聞こえていないんじゃないか」とか、「見てもわからない」、そういうことから、日々の生活の中で、今おっしゃったように、ご苦労されていることが多いんではないかと思いますけれども、どんなことがあるのか、教えていただけますか。どうぞ。

高岡:
はい。例えば、難聴のお母さんは、寝ている間に赤ん坊の泣き声を聞くことができないために、夜通し起きているとか、かなり育児にも苦労しています。高齢のお年寄りは、家族の団らんから誤解されたり、テレビを聞いてもわからない状態です。

電話ができないために、仕事の内容も、給与も差別されている難聴者はたくさんいます。聞き間違いのために、冷笑や嘲笑を受けたりしますので、わからないまま返事をしたりして、あとで大きなトラブルになったりだとか。道を歩いていて、自動車や自転車の近づく音が聞こえず、ヒヤッととすることは少なくありません。実際に、事故に遭ってなくなった方もいます。どうぞ。

湯浅:
ありがとうございます。多くの人にとっては、自分自身は健康診断を受けるときの聴覚検査というのが、唯一の経験だと思うんですね。あれは自己申告ですから、自己申告だから何とでも言えるんじゃないか、みたいな勘ぐりも起こりやすいように思いますけども、ABR検査などについても、教えていただけますか。どうぞ。

高岡:
はい。聴力の検査は、健康診断のときなどにするものは、純音の大きさ、音圧で測るのが一般的ですが、これだけでは言葉の聞き分けまで検査できません。語音明寮度という、言葉の聞き分けの検査も行う必要があります。

ABR検査というものは、とても響きのあったときに脳波の反応で見るものですが、言葉の周波数帯より、高い周波数帯で行われるため、ABR検査で反応があったからといって、必ずしも言葉の聞き取りができているかどうかは、懸念されるところです。難聴の検査では、実際の難聴者が生活音の中で聞いていますので、一定のノイズがある中での聞き取りの検査などが必要だと思っています。どうぞ。

湯浅:
次の質問です。WHOの基準に照らすと、日本の聴覚障がいは「高度難聴」のみを障害手帳の設定基準にしていると知りました。障害者手帳を持たない軽度、準高度の難聴者が多く暮らしてらっしゃるという現状があるのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。どうぞ。

高岡:
はい。一般的には、聴力レベルで35~50dBくらいの軽度難聴、50~70dBくらいの中等度難聴、70dB以上の高度難聴、90dB以上の重度難聴と言っています。身体障害者手帳の一番軽い6級は、両耳70dB以上とされていまして、重度難聴になります。

しかし、世界保健機関WHOの基準は、41dB以上なんです。つまり、日本の難聴の基準は、国際的に極めて高く、多くの難聴者が福祉の恩恵を受けることができません。私たちは、聴覚障がいの認証の見直しを強く求めています。聞こえに困難を抱える、多くの人を福祉サービスの対象とする方向で、新たな検査方法を導入することで、障がいに認定される人の範囲が狭められているということは、決して容認できないと考えています。

普通の会話や生活音の聞き取りが困難な人を対象にするように、世界保健機関の基準に合った聴覚障がいの認定のあり方について、厚生労働省に検討を求めているところです。ぜひ、国民の皆さんのご理解をお願いしたいと思います。どうぞ。

湯浅:
はい、よくわかりました。高岡さんありがとうございました。どうぞ。

高岡:
はい、こちらこそありがとうございました。

 

湯浅:
高岡さんありがとうございました。多くのファンの方を欺いた佐村河内さんのやったことは、許されるべきことではありませんけれど、それをもって、世界保健機構、グローバルスタンダードに比べて、狭く限定されている日本の聴覚障がいの人たちが、さらに追い込まれることがないように、それは私たちも十分気を付けていきたいと思いますね。以上、「みんなジャーナル」でした。


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