第34回「平松さんはどう見てはんのん? 大阪市政と大阪都構想」

2013年09月02日
ゲスト 平松邦夫さん(前大阪市長)
パーソナリティ 今西憲之(ジャーナリスト)
テーマ 平松さんはどう見てはんのん? 大阪市政と大阪都構想
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今西憲之】大阪市長だった、平松さん。
元MBSのアナウンサーで「しゃべり」では我々の大先輩。
2年前のあいまみえた、橋下大阪市長に対して、
時には、弁舌鋭く、時には、緩急を交えたトークは「絶妙」に尽きました。
すっかり「聞き役」にまわってしました。
ラジオフォーラム

平松邦夫前市長(右)とともにこれまでの橋下府市政、都構想の行く末を考えます。


■大阪都構想議論の再燃・堺市長選

長らく助役出身者が市長を務めてきた大阪市ですが、平松さんは戦後初の民間出身市長。2011年11月の市長選で、府知事を辞職して鞍替え出馬した橋下徹・現大阪市長に敗れました。

一方9月29日には、大阪都構想議論の再来と言うべき堺市長選があり、都構想に反対する竹山修身現市長と、大阪維新の会が擁立する西林克敏市議の一騎打ちが見込まれています。

平松さんは「堺市は政令市になって日が浅い。それをもう一度分割して誰のためになるのか? しかし意見をコロッと変える人(橋下市長)なので、堺はひとつの特別区だなどとも言い出しかねない」と見通します。

■大阪にとっていいことはひとつもない

ラジオフォーラム

大阪都構想の区割り案(大阪維新の会案)では大阪市と堺市が20の区に再編される。※クリックして拡大
(画像はWikipediaより)

争点となる大阪都構想は、大阪府、大阪市、堺市を廃止し20程度の特別区に再編する構想。その大きな狙いは大阪府市の二重行政の解消にあるとされます。

平松さんはこの都構想が大阪にとって全てマイナスだと断言。「行政が効率化する、コンパクトになると言うが、大阪市はひとつで既にコンパクト。特別区6か7に分けても、そこにかかる人件費や人員は今のままでは絶対に足りなくなる。これは大きな矛盾点だ」と指摘します。

■キャッチフレーズが踊る都構想

橋下氏とは当初、同じ民間出身者ということもあり「大阪を良くしていく」という気持ちで一致していたという平松さん。橋下氏の突然の心変わりは、府市の水道事業統合の協議がきっかけ。「市が提案したコンセッション方式(事業に関わる資産を府が保有したまま、市が事業認可を受け指定管理者として水道事業の運営を府から受託する方式)に一旦合意していたにも関わらず、ある日突然、経緯の説明もなく、大阪市が他の自治体から信頼されていないからだめだと」。

その当時は都構想の話もなかったと言います。「府の膨らんだ借金を市の資産で隠す。そう勘ぐられてもおかしくない作戦だが、マスコミはキャッチフレーズに飛びついてしまった。中身を問えば、それはこれからみんなで考えると。こんなイリュージョンはない」。

大阪維新の会が発足、大阪都構想が言われ始めておよそ3年。平松さんは「その間に、彼らはなにをしたのか? 大阪はどれだけよくなったか?」と、具体的に検証していくべきだと指摘します。「統治機構を変えるとか言われているが、変わった後、自分のためにならなかったとわかっても、もとには戻せない」。

■なにか言えば“守旧派”のレッテル

労働組合に担がれていると言われるなど、“守旧派”のレッテルを貼られがちだった平松さん。実際は職員数の削減を進めるなど、組合に厳しい対応でした。

大阪ダブル選でも悪玉扱いでしたが、「メディアでは橋下に対する平松の攻撃、というかたちばかりが伝えられる。行政は利害対立の真ん中にあり、常に大きな耳を持っていないといけない。一方、橋下氏は人の話を聞かず、意見もパッと変わる。腰を抜かしそうになったことは何度もある」と振り返りました。

■福島というだけで車に傷…避難先での苦しい現状

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防護服を来て街を歩く男性。現在も数多くの人々を故郷を追われ、避難生活を強いられている(画像は2011年4月の双葉町、Cryptomeより)

もうひとつのテーマとして、福島第一原発事故の避難者で、現在いわき市の仮設住宅で暮らす山内さんにお電話をつなぎ、避難生活の現状をお聞きしました。

楢葉町で20年以上蕎麦屋を営んでいた山内さん。事故当時の状況や、煩雑な東電から補償をめぐる煩雑な手続きなどを語っていただきました。「私たちの仮設での暮らしがどういうものか、上層部の人たちに知ってもらいたい」。

福島というだけで毛嫌いされる、一時東京に避難した時も車に傷をつけられたという山内さん。「もっと現実を知ってほしい。福島の復興に本当に力を入れてほしい」と訴えました。

■原子力ムラはマフィアか? – 小出裕章ジャーナル

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原子力規制委員会の田中俊一委員長も“原子力ムラ”出身。規制側の仕事は原発を推進することとする小出さん
(画像はIWJより)

リスナーの素朴な質問「小出さんは“原子力ムラ”の一員ですか?」から、その実態に迫りました。

小出さんは最近の動きを見て、共同体という意味での“ムラ”では適さないと感じていると言い、「ほとんど犯罪集団。原子力マフィアと呼んだ方がいいのではないか」と語ります。

原子力委員会の田中俊一委員長も原子力ムラ出身。規制側にこうした人事が行われていることについては「まともな規制がなされる道理がない。ムラの汚さがよく現れている」と断じます。

また原発への新規制基準について、今西が規制ではなく安全基準という位置づけではないかという問いに、小出さんは「福島の事故を経て、安全基準は作れないということが示された。お墨付きを与えたところで事故は起きる。それがわかったために、安全ではなく規制基準となっている。それも再稼働させたいがため作られたもの。規制庁もその道具だ」と批判。

一方、原子力基本法にも言及。「そこには平和目的であれ、原子力を推進すると書かれている。日本では原子力を進めるということが大元になっており、規制委員会もどうやったら進められるか、そのことしかない」と指摘しました。


ゲスト略歴
ラジオフォーラム 平松邦夫(ひらまつくにお)
前(第18代)大阪市長、元毎日放送 アナウンサー、元毎日放送ニューヨーク支社長、役員室長、MBSナウ初代ニュースキャスター(1976-1994)。市長就任後は、財政再建など市政改革を推進、職員数の削減、市債残高の削減、経費削減を推進する一方で、「市民協働」「いっしょにやりまひょ」をスローガンに、市民と共にある自治体の姿を追求。安全・安心なまちを目指し、街頭犯罪、違法駐輪などの対策に成果を上げた。また大都市ならではの震災支援、生活保護問題への取り組みなどを積極的に進めた。同志社大学卒。現在は「公共政策ラボ」(PPL)代表。


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