第33回「東京電力記者会見と原発事故」

2013年08月26日
ゲスト 木野龍逸さん(ジャーナリスト)
パーソナリティ 今西憲之(ジャーナリスト)
テーマ 東京電力記者会見と原発事故
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今西憲之】東京電力会見にずっと出席している木野さん。
ずっと、東京電力のインチキな会見には憤慨していた。
「ウソつくなと一回、言ってやりたい」
いつか、そう言ってやりたいという。
その前に、ラジオフォーラムで言ってもらいました。
「ウソばっかり言うな」
ラジオフォーラム

東電記者会見に出席し続ける木野さんとともに、同社の隠蔽体質、事故の実態について考えます


■聞かれたことに答えない – 東電会見のひどい実態

ラジオフォーラム

会見に幹部はほとんど出席しないが、8月21日には汚染水の大量漏出の謝罪で相澤善吾副社長(左)が出席
(画像はIWJより)

福島第一原発事故発生当初から、東京電力の記者会見に出席し続け、鋭い質問を投げかけてきた木野さん。毎日行われていた会見も現在は月、水、金曜の週3回に。その理由を「東電によると福島第一の状況が落ち着いきたから」と苦笑を交えて明かします。

事故をきっかけに原発問題を追いかけるようになったという木野さん。「あまりに会見がひどい。聞かれたことに答えない、あるいは確認するというような答えで、明らかに隠しているだろうと。自分で行って確かめようと思ったのが最初のきっかけ」。

ほぼ毎回にわたって、イライラさせられるという木野さん。「汚染水が海に漏れたことが明るみになってから、会見は3時間ほどに。ほとんど聞かれたことに答えない、余計な話で時間が長くなっている」。

■「確認します」「データを精査」を連呼、すぐには認めない

事実を隠蔽する東電の対応は福島事故発生当初から。メルトダウンを認めたのも事故発生からおよそ2ヶ月後(写真は2011年3月15日、田中龍作ジャーナルより)

メルトダウンの事実も、事故から2カ月経ってようやく認めた東電。その会見の悪名はメディアに周知されているという今西。そんな会見の印象を、木野さんは「あとから突っ込まれないよう、言葉の使い方、ごまかし方が上手い。はぐらかし続けてメルトダウンも認めないため、会見場にいた我々も、会見を見ている一般の人たちも、何が起きているのかさっぱりわからなかったと思う」。

核心に触れる質問になると回答の先送り、明確に答えないパターンが目立ち、問題が報じられてもすぐには認めないのが東電。「狙ってやっているとしか思えない。数ヶ月後になって認めれば問題を小さく見せられる。そういうマニュアルがあるとしか思えない」。

会見で印象に残っていることとして、木野さんは「個人的には、作業員に何かあった時の発表。遅い時は1、2週間経ってから。コトが重大になればなるほど発表時期を遅らせるあの姿勢は、東電への大きな不信感になっている」。

■泥棒に現場検証させるようなもの

ラジオフォーラム

会見の発表内容や状況を検証した著書『検証 福島原発事故・記者会見 東電・政府は何を隠したのか』。共著で昨年亡くなったジャーナリスト・日隅一雄さんも東電を厳しく追及してきた。

汚染水の海への漏出を発表した7月22日の月曜日。その事実を東電は前週の木、金曜日には把握していたと言います。海際の観測用井戸と海の水位が連動していることがきっかけですが、この水位のデータは前週金曜の会見で公表を求める質問があったものの、データを精査しているとして東電は公開しませんでした。

そもそもデータを精査するのは本来こちら側で、東電は公表だけすればいいことだが、拒否一辺倒だった」と、都合の悪い情報を隠そうとする意図が明らかだったと言います。

既に大量の税金が投入されている東電。保有するデータも国民のものではないかとする今西に、木野さんは「何を根拠に隠すのか、理解できない。これでは泥棒に現場検証させるようなもの。国か第三者機関がデータを管理するべきだ」と指摘しました。

■いまさら汚染水で騒ぎ始める不思議 – 小出裕章ジャーナル

薬液を注入し“土の壁”を作る地盤改良工事。汚染水遮断の効果は数年にとどまり、決定的な対策にはならないという
(写真は東電ホームページより)

福島第一原発において汚染水が海に漏出していることを、最近になってようやく認めた東京電力。小出さんは「事故発生当初から汚染水は漏れていた。防水加工もしておらず、地震の揺れなどで傷んだコンクリートの構造物から、漏れるのは当たり前。なぜ今になって大騒ぎするのか不思議に思う」と断じます。

自民党政権になって、事故がなかったかのように思わせる動きや政策が出始めているという木野さんの問いには、「事故は収束しておらず、何百万人の人々が故郷を追われたり、放射線管理区域にされるべき汚染地帯に棄てられたりしているにも関わらず、事故が終わったかのように宣伝され、マスコミも積極的に報道しなくなっている」と指摘しました。


ゲスト略歴
ラジオフォーラム 木野龍逸(きのりゅういち)
1966年生まれ。フリーライター。編集プロダクションを経て、1995年からフリーのライターに。福島第一原発事故発生を機に、東京電力記者会見に出席し続ける。著書に『検証 福島原発事故会見 東電・政府は何を隠したのか』『検証 福島原発事故・記者会見2――「収束」の虚妄』(岩波書店)。


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