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原発と司法「私が少なくとも関わった裁判では、どんなに安全性論争をして原子力発電所が危険だということを立証しても、結局は裁判では勝てないということでした」〜第163回小出裕章ジャーナル



ラジオ放送日 2016年2月19日〜26日
Web公開 2月20日
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今西憲之:
今日は大飯高浜原発の差し止め却下、そして再稼働についていろいろ伺っていきたいと思います。福井地裁は昨年の12月24日関西電力高浜原発の3・4号機の運転を差し止めた4月の仮処分決定を取り消しました。簡単に言いますと、関西電力の異議を認めたということになります。先月1月29日、高浜原発3号機は残念ながら再稼働してしまいました。また大飯原発の3・4号機についても、運転差し止めを求めた仮処分申請を却下しています。安全性ですとか、責任の所在、ようわからんまま差し止めが却下されました。司法は福島第一原発の事故をどない思ってるのか、何を学んだのかなぁと思えてなりません。

小出さん
私自身は原子力の問題にずっと関わってきて、裁判で安全性というものを争ったこともかつてはありました。しかし私が少なくとも関わった裁判では、どんなに安全性論争をして原子力発電所が危険だということを立証しても、結局は裁判では勝てないということでした。

そのため私は、原子力というものに関する限りは、裁判いわゆる司法は独立していない、日本には三権分立というものはないんだというように思うようになって以降、原子力に関する限りは裁判に関わらないようにしてきました。

しかし、一昨年の5月に大飯原子力発電所の差し止め裁判の判決が福井地方裁判所から出されて、その判決では原子力発電所というのは巨大な危険を抱えているし、万が一でも事故を起こしたらば人々の生活が破壊されてしまうので、原子力発電所は動かしてはいけないという、実に画期的な、私から見るとまっとうな判決が出たのでした。

続いて高浜原子力発電所に対しても、樋口裁判長というのですが、その方が再稼働させてはならないという判決を出してくださって、日本でもまだ司法が生きていたのだな、少しは希望があるのだなと私自身は思いました。

しかし結局は、樋口裁判長は家庭裁判所に更迭されてしまうということになりましたし、最高裁が送り込んできた別の裁判官が再稼働してもいいというような判決を出してしまったわけです。「ああ、本当に日本という国では裁判というものはまだまだなんだなあ」と改めて私は思いました。

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今西:
はい。安全対策上、想定すべき最大の地震の揺れの強さ、その揺れや津波に対する関西電力側の対策、そして使用済み燃料棒の保管の危険性。福井地裁はどの部分をとっても原子力規制委員会の審査に不合理な点はないとして、原発が周辺住民の人格権を侵害することはないという認定をしました。が、福島第一原発の事故を見ても、とてもそのようには思えません。本当に安全は確保されているのですか?

小出さん
そのことが問題なわけですが、これまでももちろん原子力発電所に関しては、さまざまな基準があって、その基準に適合するかどうかを厳重に審査した上で原子力発電所の安全性を確認して認可してきたと、国の方は言ってきたわけです。

しかし残念ながら、福島第一原子力発電所の事故が事実として起きてしまって、それまでの基準がだめだったということが事実としてわかったわけです。そのため「それなら新しい基準をつくらなければいけない」と言って、当初は新しい安全基準というものをつくりたかったわけですけれども、しかしどんなに厳密に審査をしたところで、その審査をすり抜けて事故が起きるということが福島第一原子力発電所の事故で示されてしまったわけですから、安全という言葉は使えない。だから規制基準というものをつくったわけです。

そして、その規制基準に合致するかどうかということを原子力規制委員会という委員会が審査してきて、川内原子力発電所、高浜原子力発電所、伊方原子力発電所という所に「新しい基準に適合したことは認める」と言ったわけですが、でもそれと同時に、原子力規制委員会の委員長の田中俊一さんは、「安全だとは申し上げない」と明言しているわけです。つまりどんなに厳しく審査したところで、大きな事故が起きる可能性はあるということを規制委員会自身が認めているわけですし、今回の福井地裁の決定も「可能性が全くないということではない」とはっきりと言っているわけです。

ただただ新しい規制基準に則ってやったんだからもういいだろうという、そういう判断で司法が結局、行政に屈服したということだと私は思います。

今西:
はい。再稼働しました高浜原発はプルトニウムとウランの混合生産化合物、いわゆるMOX燃料を使ってのプルサーマル発電となっています。

小出さん
ええ、そのプルサーマルというのは、現在動いている原子力発電所、高浜原子力発電所もそうですけれども、そういう普通の原子力発電所でプルトニウムという物質を燃やしてしまおうという計画です。そんなことをすれば安全性が犠牲にされますし、経済性すらがないということを電力会社自身が認めているのです。

なんでそんなことをやろうとしているかと言えば、そのプルトニウムという物質は長崎原爆の材料になった物質なのですが、それをすでに日本という国が大量に溜め込んでしまって、それをなんとか減らさないことには、国際的な非難をまぬがれることができない。だから仕方がなくて燃やしてしまおうというところに追いつめられているのです。

これから事故が起きなければいいと私はもちろん願いますけれども、だんだんだんだんまた事故の可能性が増えているところに、日本というこの国が追い込まれて行ってしまっているということだと思います。

そして福井県の若狭湾というところには、高浜原発を含めて10基を超えるような原子力発電所が林立していますので、ひとつの原子力発電所の事故で、また他の原子力発電所にも影響が及んでしまうという可能性もあると思いますし、今後地元の人達、一体どうやって逃げることができるかということを福井県も含めて、きっちりと考えておかなければいけないと私は思います。

今西:
わかりました。小出さん、今日もありがとうございました。

小出さん
はい。こちらこそありがとうございました。



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