小出裕章ジャーナル

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日印原子力協定について「技術供与しないということの方がよっぽど論理的には筋が通ると思いますけれども、日本も米国も、もう体面もなにもかなぐり捨てて金儲けに走るということになっているわけです」〜第157回小出裕章ジャーナル



ラジオ放送日 2016年1月8日〜15日
Web公開 1月9日
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西谷文和:
今日はですね「日本とインドの原子力協定原則合意」と題してお送りしたいと思うんですが、安倍首相が昨年の12月12日にインドのモディ首相とニューデリーで会って、日本の原発輸出を可能にする原子力協定の締結に原則合意したというニュースが流れ込んできました。先生、インドというのはパキスタンと今、戦争状態にありますよね?

小出さん
そうですね。

西谷:
実際に戦争状態にある国に原発を輸出するということを聞かれて、先生どう思われますか?

小出さん
難しいご質問ですけれども、例えば日本は今、特定の国と戦争状態にないわけですけれども、そんな国ですら私は原子力をやってはいけないと言い続けてきましたので、インドという国に原子力をやってほしくはありません。特にインドという国は1974年に原爆をつくっている国なんですね。

西谷:
そんな早くつくってるんですか?原爆を。

小出さん
はい。それはカナダから導入した原子炉を動かして、その原子炉の中でできた使用済み燃料を独自の再処理技術というものを使って、プルトニウムを取り出して原爆をつくったのです。

西谷:
もうそんな早くから。再処理技術を持っていたわけですか?

小出さん
そうです。独自に再処理技術まで開発して原爆をつくった国なのです。ですから原子炉を持ってしまえば、いくらでも原爆をつくれてしまうというそういう国なわけです。当時、米国ではカーターさんが大統領をしていたのですけれども、インドが核実験をしたということを知って、カーターさんは2つのことをやりました。

1つは、たとえ平和利用、あるいは商業利用と言ったとしても、原子炉を動かしてる国が再処理という技術を持ってしまうと、もう核兵器の拡散を防ぐことができない、だからせめて再処理という技術はもう拡散させてはいけない。海外には決して出さないということにしたわけだし、米国の中でも商業的な再処理はもうやらないということを1つ決めました。

そして2つめがインドという国とは、それまでは原子力協定を持っていたのですけれども、もうインドというそういう危ない国とは、原子力に関しては協力しないと。たとえ平和利用というものであっても、インドには原子力技術を供与しないということをカーターさんが決めた。

西谷:
そうなんですか。アメリカでさえ、そういうことを。

小出さん
そうです。ところが息子の方のブッシュですけれども、大統領になった時に、米国の原子力産業がもう崩壊に貧していた時期だったのです。それでブッシュが何をしたかと言うと、インドに原子力を売りつけることで金儲けをして、米国の原子力産業を救おうとしたのです。

そのためそれまで原子力協定を破棄していたわけですけれども、再度原子力協定をインドとは結んで、「インドはいい国なんだから、もういいよ」ということで、再度金儲けに走ったということをブッシュはやった。

その尻馬に乗って、日本が米国と一緒にインドに原子力技術、あるいは原子力発電所、具体的なものを輸出して金もうけをしようということになってきたわけで着々とそのレールを日本も敷いてきた、そして最後に、インドと原子力協定を結ぶことで金儲けをまたするということを安倍さんがこの間やったわけです。

西谷:
その上でですね、かなりの批判があったもんですから、日本政府はもしインドが核実験をしたら輸出を取り止めると言ってますが、これ信用できますかねえ?

小出さん
わかりませんけど、でも少なくともインドはもう自分で再処理技術持っているわけですから、原子力発電所を輸出してしまえば、インドはもういつでも原爆をつくれるというそういう力をもう事実として持ってしまってるわけです。仮に核実験をして、それ以降協力を取り止めると言ったとしても、もうそれまでにはもう協力してしまってるわけですから、ほとんど意味がないと私は思います。

小出裕章ジャーナル

西谷:
おさらいですけれども原発を売り込む、つまり原子炉を輸出するということは核兵器ができるということですよね? でそれを今現在、戦争状態にある国に売ってしまうと? こういうことですよねえ。武器輸出三原則っていうのがかつてありまして、紛争当事国には武器を売らないと言ってたんですが、これまさに原発を売るというのは、紛争当事国に武器を売るということになると思うんですが。

小出さん
そうですね。安倍さんはすでにもう武器輸出三原則も撤廃してしまってるわけですから、原発を売るというのも、彼の中では一貫してるんだと思います。

西谷:
NPTにインドは非加盟なんですね。NPT自身が不平等な条約だということをよく言われてるんですけど、これすらも破ってしまったということですよねえ?

小出さん
そうですね。NPTというのは、すでに核兵器を持っている、所謂、国連の常任理事国5か国だけはもう仕方がないから容認すると。ただ、他の国に関しては、核兵器は絶対に持たせないというのがNPTなわけで、いわゆる今、西谷さんもおっしゃって下さったけれども、完璧な不平等条約なんですね。

ですから私はその条約自身、やはり変えなければいけない。そういう条約の下では、たぶん核廃絶はできないと私は思っているのですが、でもそれすらもインドは認めないというそういう立場の国だったんですね。ですから核廃絶、そしてNPTを守ろうという国であるならば、やはりインドに関しては原子力技術供与しないということの方がよっぽど論理的には筋が通ると思いますけれども、日本にしても米国にしてもとにかく金儲けをしたいということで、もう体面もなにもかなぐり捨てて金儲けに走るということになっているわけです。

西谷:
儲かれば、何でもいいのかっていう感じはしますが。

小出さん
まさにそうなんですね。安倍さんは今、経済最優先と言ってるわけですけれども、儲かれば何でもいいというのが彼の本質だと私は思います。

西谷:
先生は、インドのウラン鉱山を取材されたことがあるというふうにお聞きしてますが、やはりインドというのは格差も激しいし、本当であれば原発を輸出するんじゃなくて、もっと人道支援とかそういうもので支援していくべきだというふうに僕思うんですけど。

小出さん
もちろんそうだろうと思います。私はインドの今、西谷さんおっしゃって下さったインドの唯一のウラン鉱山ジャドゥゴダという所にあるのですけれども、そこに汚染の調査に何度か行きましたけれども、本当に悲惨な被害がたくさん出ている。

西谷:
先住民の方が住んでおられる所ですよねえ。

小出さん
はい、そういう被害を起こさせないためにどういうことができるかというそういう協力であれば、もちろん私はやるべきだと思いますけれども、むしろ原子力発電所をインドに輸出する、押し付けるなんていうことをすれば、まだジャドゥゴダを含めたウラン鉱山の被害が拡大してしまうというそういう方向に行くわけですから。

西谷:
そこで、また掘り出すでしょうからねえ。

小出さん
そうです、はい。今の日本の国のやってることというのは、けしからんことをやってるなと思います。

西谷:
私、インドもパキスタンも行きましたけどね、ものすごいスラム街があるんですね。そういう人達に家を建ててあげたりとか、学校を建ててあげたりとか、そういうふうな経済支援であって欲しいですよねえ。

小出さん
そうですね。

西谷:
高速鉄道に新幹線をつくるとか巨大プロジェクトばかりですけど、そうではなくて、もうちょっとそこに住んでる人達が幸せになるような支援の在り方、そういうものが本当は求められているんでしょうねえ。

小出さん
そうです。電気すら使えないという人達が、もう山ほどいるというそういう国ですので、できることはもっともっと他にたくさんあると思います。

西谷:
他の方法があるでしょうね。はい、わかりました。小出先生、今日はどうもありがとうございました。

小出さん
こちらこそ、ありがとうございました。



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