第40回「“ハト派”政治家は今の政治状況をどう見るのか」

2013年10月14日
ゲスト 河野洋平さん(政治家,元自民党総裁)
パーソナリティ 湯浅誠(社会活動家)
テーマ “ハト派”政治家は今の政治状況をどう見るのか
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00:31 オープニング
05:02 パワーポリティクスがなぜ許されるのか
16:52 小出裕章ジャーナル/汚染水の危険性
25:38 こぞって“右”の自民党
45:25 全国夜間中学校研究会の取り組み
50:27 エンディング

湯浅誠】高度経済成長期以降、日本には大きな社会経済的かつ政治的変動が3回あったと思っている。

1度目は、高度経済成長を終焉させた1973年のオイルショック、そしてロッキード事件、自民党が動揺して新自由クラブが発足した。2度目は、東西冷戦が終焉した1990年前後。国内的にはリクルート事件、佐川事件やバブル崩壊があった。その延長線上に細川政権と自社さ政権の誕生。3度目が、サブプライムローンとリーマンショックによる新自由主義経済の行き詰まり、アメリカの凋落による世界の多極化・無極化。国内的にも経済停滞と民主党政権の誕生。

河野洋平さんは、1度目を新自由クラブ代表として、2度目を自民党総裁として迎えられた。いわば渦中にいた中心人物だ。変動期の可能性や難しさをよく知っている方だろう。

河野さんは、先日お会いした加藤紘一さんもそうだったが、まったく偉ぶったオーラを出さない、対等な目線で対話してくれる方だった。話は、予定時間を超えて60分に及んだ。

幼少期のこと、人の話を聴くこと、多元主義、民主主義における多数決と合意形成、現在の自民党の評価、などを縦横に語ってくれた。


ラジオフォーラム

要職を歴任した河野洋平さんに、今の政治状況をどう見るか、語っていただきます

■“ねじれ”は解消すべきなのか?

湯浅誠は参院選前の7月、とある雑誌記事に注目した。内容は官房長官や外務大臣、自民党総裁、衆議院議長など数々の要職を歴任された河野洋平さんへのインタビュー。

官房長官だった1993年には、従軍慰安婦問題で、日本軍が強制したという形の関与を認めて謝罪をした「河野談話」を発表したことでも著名だ。

*****

衆議院と参議院で多数派が異なる、いわゆる”ねじれ”現象は政治が停滞する、解消すべきだとよく言われますが、少なくともいまの状況では私はそうは思いません。なぜならば、衆議院で一つの政党が圧倒的に多数を占めている中、参議院でもそうなればその政党の意向がすべて通り、多くの政策がチェックされることなく進められてしまうからです。

いまはねじれがあるから、こうしたいと思っても一度立ち止まらなければなりません。相手の言い分や立場を考えるわけです。それがとても大事なことで、冷静に検討することにつながります。お互いが話し合い、譲歩しあって合意点をみつける努力をすることで、よりよい第三の道が見つかる場合が多いのです。

むしろいまは、政党よりも人を選ぶことが大事ではないでしょうか。必ずしも選んだ人の主張通りになるとは限りません。でも中長期的に考えてその人が将来の政界再編の中でどこに位置づくか、その可能性にはつながります。
(生活クラブ生協の雑誌『生活と自治』6月号より)

*****

政党間の駆け引きに目を奪われるあまり、私たちは実はじっくりとひとりの政治家を見つめていないのかもしれない。そんな思いから、湯浅が取材を申し込み、インタビューが実現した。

■官邸主導は不健康な状態

新自由クラブの発足させるなど、国民に政権の選択肢を提供することが役割だとする河野さん。現在の政治状況について「パワーポリティクスが認められ許されているような状況。しかし民主主義はイコール多数決というほど単純ではなく、合意を形成することが重要。決められる政治がいいんだ、と騙されてはいけない」。

官邸主導で、政党がだらしない。これは健康的な状態ではないと、河野さんは危機感を示す。

■少数者の意見が反映されない小選挙区制度

『生活と自治』の記事は先の参院選前。その中で河野さんは「今も政界にいたらどうだったろうか悩む」と答えていた。「共感できる政党がどこにもない。小選挙区の下では、各党の主張がマニフェストという形で、単純化して表に出てくる」と、選挙制度の問題点に言及。

小選挙区では各選挙区で当選者はひとり。死票をどう救うために併設された比例代表制だが、重複立候補が可能なため小選挙区での落選者も復活当選が可能となり、比例代表単独の候補者は当選が難しくなる。「最近では議員定数削減まで取り沙汰される。これは比例代表制の本来の意味がわかっておらず、安易に切りやすいところから切ろうとする。絶望的な状況だ」と指摘する。

■政官財、そしてメディアの馴れ合い体制を打破するには

日本社会はおおむね、穏健主義で動いてきたとする河野さん。かつての自民党は唯一の保守政党として、この穏健主義に基づき右派、左派さまざまな主張を守備範囲にしてきたが、最近の自民党は“右へ寄る”対応を繰り返しているという。「先の総裁選では、各候補者がこぞって右。自信を失ってきたことの現れなのか、内向きの過激さが目立つ。今の政党に期待はできない」と心情を吐露する。

“原子力ムラ”という言葉にあるように、官邸、財界、メディアの一部が組んだ馴れ合い体制が、かなりしっかりできていると河野さんは分析する。「こうした体制に対抗する力が日本にない。対抗軸となる議員を市民、有権者が育てることも大事」と語った。

■夜間中学の課題とは – 全国夜間中学校研究会の取り組み

夜間中学校とは義務教育を保障されなかった人たち(義務教育未修了者)が学ぶ場。現在は元中国残留孤児や不登校や引きこもりの若者など、さまざまな人々が集う。

草京子さんは、日本には学齢期を超えた人々の学びを保障する法律がなく、全国夜間中学校研究会は義務教育と学習機械充実法案の素案を作成。同研究会の草京子さんは「就学率100%と言われるなか、教育を受けられなかった人がいる。当事者は声を上げにくい。夜間中学、そしてそこに通う人々への想像力と関心を持ってほしい」と訴えた。

■汚染水漏れはどれほど危険なのか? – 小出裕章ジャーナル

ラジオフォーラム

泥縄と化した汚染水対策。連日のように漏出の報道がつづく(画像は東電ホームページより)

福島第一原発事故発生当初から、汚染水問題は続いてきたとする小出さん。「レベル7の事故が今も続いている。そういう認識をすべきだ」と強調した。



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