第23回「南海トラフ地震〜東日本大震災・阪神大震災から学ぶこと」

2013年06月18日

■ゲスト:渡辺実さん(防災・危機管理ジャーナリスト)
■パーソナリティ:石井彰(放送作家)
■テーマ:南海トラフ地震〜東日本大震災・阪神大震災から学ぶこと
■放送日:2013年6月15日(土)〜21日(金)(収録日:2013年5月7日)
■音楽のたね:普天間かおり『桜舞う町で』
※著作権の関係によりアーカイブ中での楽曲放送はありません。なお楽曲はこちら(ラジオ福島)からダウンロードいただけます。

放送内容のサマリー



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■各コーナー(右テキストリンクをクリックすると、YouTube上で各コーナーの頭から再生できます)  07:55 4連動の巨大地震-南海トラフ地震の想定
 18:21 小出裕章ジャーナル/地震による原発損壊の危険性
 30:02 災害対応への体制・法整備のあり方
 45:16 ゆめ風基金「障害者市民防災提言集」
 53:15 エンディング


ラジオフォーラムにご出演の渡辺実さん

第23回は、防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実さんをゲストにお迎えしました。パーソナリティは放送作家の石井彰。

渡辺さんは、国内外の災害現場を取材。多くの命を奪う大災害から何を学ぶのか、今後の災害に対応するために、より早く被災現場に足を運び、起きたこと、これから起こることをつぶさに追いかけることが重要と訴えられています。

■南海トラフの地震想定、3つのポイント
話題のトピックを取り上げるコーナー「ニュースのたね」では、南海トラフ地震がテーマ。

100〜150年の周期で必ず発生している南海トラフでの大地震。東海東南海、、日向灘の4つの地震が連動して起きること、地震を引き起こす地下の岩石の破壊範囲「震源域」は内陸にまで拡大、マグニチュードは9クラス、といった可能性が想定されています。

この3点がこれまでの大地震の想定と異なるポイントと示す渡辺さんは、その原因が東日本大震災にあると指摘。「東日本大震災は多くの地震学者にとって想定を超えたもの。これからは想定外があってはならず、今考えられる最悪のシナリオが示されている」としました。

南海トラフ地震について解説する渡辺実さん(ラジオフォーラム)

■実は最悪のシナリオとは言えない理由
死者32万人、被害額は220兆円。しかし、この大きな被害想定にはトリックがあるという渡辺さん。それは、想定の中に原発事故の被害が入っていないこと。

「静岡県の浜岡、愛媛県の伊方の2原発が震源域に存在する。これでは最悪のシナリオとは言えず、原発事故を含めればもっと大変な事態になる。私たち国民はそのことを念頭に置きながら、これらの数字を見なければならない」と強調します。

こうした被害想定を目にした時、自分に被害は降りかからないと考えがち。渡辺さんは「阪神・淡路と東日本、ふたつの大震災を共有し、私たち日本人にはもう他人ごとではなくなった。自分自身に置き換えることも必要だし、記念日でも何でもない日にこうした放送をすることも重要」と訴えました。

■東日本大震災は人類初の大災害
数々の災害現場を取材してきた渡辺さんは、原発災害を含む大災害を世界は経験したことがなく、「大げさに言えば人類初の災害」と語ります。

それだけに阪神・淡路と東日本を単純比較することはナンセンスだと断ずる渡辺さん。自治体には人員や財政で余裕のない上に、行政機能そのものが被災したこと、市町村合併をして間もないため体制も十分に整っていなかったことなど、震災対応の弱さを露呈しました。

■「共助」「自助」から「公助」への転換を
さらに、災害対策を末端の自治体に委ねる災害対策基本法災害救助法による枠組みは非現実的だと渡辺さんは指摘します。「地域や被災者個人で対応すべきとする『共助』『自助』の哲学が広がっていたが、それでは対応はもはや不可能。『公助』が機能する抜本的な法改正が必要だ」。

一方、私たちのすべきことは何も変わらないという渡辺さん。「避難の訓練、食料等の備蓄、そして建物の耐震化。東日本大震災以来、自分たちは何をしてきたか、振り返って自身に問いかけてほしい」と訴えました。

■地震による原発損壊の恐ろしさ – 小出裕章ジャーナル
京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんによるレギュラーコーナー「小出裕章ジャーナル」では、地震による原発損壊の危険性について。

日本中に活断層があり、それを避けて原発を建てることはそもそも不可能という小出さん。「活断層の研究が進んでいない段階から、原発建設は始まってしまった。福島事故も津波による被害だと東電は主張しているが、地震も事故の大きな要因のひとつであったことは間違いない」とします。

数多くの配管が網の目のように張り巡らされている原発の機構。これまでは地震による建屋の揺れの方向や大きさが問題にされてきましたが、活断層のズレによる被害では、建屋そのものに変形が生じます。「建屋はまるで配管のオバケで、変形が生じればそれらが保たない。そういった想定を今までしてこなかった」と対策の甘さを指摘します。

また南海トラフ地震の震源域にある伊方原発の危険性にも言及。「急峻な佐多岬の崖っぷちに建ち、そばには中央構造線という、日本最大と言われる活断層が存在する。以前からその危険性を心配している」としました。

暫定的でも被害想定の中に原発事故を織り込むべきとする渡辺さん。小出さんは「福島事故は現在も進行中で、被害額がどれほどになるか、まだわかっていない。南海トラフ地震での原発事故の被害を推計するのは、ほとんど不可能に近いのではないか」とします。

常に最悪の事態を想定するのが防災のポイント。小出さんは「原発を最初から無視することは防災の基本から著しく逸脱しており、想定が最大でも最悪でもないことを先に言っておくべきだ」と指摘しました。

■コミュニティのつながりを大切に – 被災地での障がい者支援
さまざまな社会活動やイベントを紹介する「ラジオのたね」では、阪神・淡路大震災を契機に発足し、災害における障がい者支援を進めるNPO法人「ゆめ風基金」の八幡隆司さんにお電話をおつなぎしました。

「もともと手薄だった障がい者への支援体制が、震災によってより深刻さが増した」という八幡さん。同基金が編集・発行した「障害者市民防災提言集・東日本大震災版」は、阪神大震災や中越沖地震などを踏まえた提言集に、東日本大震災での支援活動から見えてきた問題点を加え、8つの提言を改めてまとめています。

「避難所に行くことすらできない、仮設住宅はバリアだらけ、など地震が繰り返し起きても、改善が進まない現状がある。今回は障がい者自身もコミュニティのつながりを大切にし、避難生活につなげられるよう提言に盛り込んだ」など、その内容をご紹介いただきました。

■関連リンク
渡辺実のぶらり防災・危機管理(日経ビジネスオンライン)
大都市を襲う巨大地震 渡辺実インタビュー(shincho live)
南海トラフ(Wikipedia)
南海トラフ地震の被害想定(朝日新聞デジタル ニュース特集)
東南海・南海地震とは?(四国地方整備局「四国の防災・災害情報」)
災害対策基本法(Wikipedia)
災害救助法(Wikipedia)

・(Googleニュース検索)
伊方原発(四国電力)
伊方発電所(Wikipedia)
中央構造線(Wikipedia)
沖合走る中央構造線 伊方原発の耐震は(四国新聞)

被災障害者支援 ゆめ風基金
障害者市民防災提言集

※ラジオ放送でお送りしている「音楽のたね」(オンエア曲)の「普天間かおり『桜舞う町で』」は、福島県富岡町の復興応援ソングです。ラジオ福島のサイトからダウンロードいただけます。

(了)


■次回24回放送のご案内
・放送日:2013年6月22日(土)〜28日(金)
・Web公開:2013年6月25日(火)
・ゲスト:
 趙博(チョウバク)さん(歌手)
 池田恵里子さん(女たちの戦争と平和資料館館長、電話出演)
・パーソナリティ:西谷文和(ジャーナリスト)
・テーマ:従軍慰安婦問題を考える

過去の放送はアーカイブページからお聴きになれます。

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