■ゲスト:西谷文和(ジャーナリスト)
■パーソナリティ:石丸次郎(ジャーナリスト)
■テーマ:
1. 西谷文和のシリア内戦取材最新レポート
2. こんなに酷い! 東京・大阪のヘイトスピーチ(詳報はこちら)
■放送開始日:2013年3月30日(土)(収録日:2013年3月18日)
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■各コーナー(右テキストリンクをクリックすると、YouTube上で各コーナーの頭から再生できます)
03:14 小出裕章ジャーナル/年間20mSvの是非
14:31 シリア内戦レポート/アレッポの状況
30:07 同/国内避難民キャンプの状況、情勢の今後
46:52 差別・憎悪扇動行動の取材レポート
※差別・憎悪扇情デモ取材の音声には、差別的な表現、不快な表現が含まれております。ラジオフォーラムではデモの様子を可能な限り正確にお伝えするため極力、音声加工・編集をせずにお送りします。ご了承ください。またこの放送に関するリスナーおよび放送局のみなさまへのメッセージはこちらをご覧ください。
第12回は、若干の特別編成でお送りしました。当番組のパーソナリティを務める西谷文和がシリアから帰国。ゲストとして同国の内戦取材をレポートしました。進行役はジャーナリストの石丸次郎。
西谷は3月2〜13日にかけて取材。被弾する危険の中で取った音声を交え、シリア北部の第2の都市・アレッポでの銃撃戦、トルコ国境で足止めされ、厳しい状況に置かれている国内避難民キャンプ・バーバルハワーの様子などをレポートしました。西谷は「支援も行き届いておらず、国際社会の無関心が状況をさらに悪化させている」と指摘しました。
またもうひとつのテーマとして東京・新大久保や大阪・鶴橋で行われている「差別・憎悪扇動行動」を取り上げました。ライターのリ・シネさんが音声とともに差別的、排外的な主張を掲げるデモの様子をレポートしました。(詳報はこちら)
京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんによるレギュラーコーナー「小出裕章ジャーナル」では、1959年3月に行われたビキニ環礁での核実験について。国際原子力機関(IAEA)は1998年の調査で、年間積算線量が15mSvに達するため、周辺の島は永住に適さないとの結果を示しました。小出さんは「一方、日本政府は計画的避難区域の基準として年間20mSvを設定している。到底許されないことだ」と、基準の甘さを厳しく指摘しました。
■次回13回放送のご案内(詳細はこちら)
・放送開始:2013年4月6日(土)〜
・Web公開:2013年4月9日(火)
・ゲスト:保坂展人さん(東京都・世田谷区長)
・パーソナリティ:湯浅誠(社会活動家)
・テーマ:市民・地域の力でできること
過去の放送はアーカイブページからご覧になれます。
東京・大阪の「ヘイトスピーチ」の現場を行く(取材:リ・シネ)
■コリアタウンで排外街宣 女子中学生に「虐殺」叫ばせる異様
「みなさん、朝鮮人は嫌いですか?みなさんが健康であることの証拠でもあります。ウジ虫ゴキブリ朝鮮人。これは、何千何万回言っても飽き足らない」
これは、去る2月9日の東京・新大久保で行われた「不逞鮮人追放! 韓流撲滅 デモ in 新大久保」と称する街宣で発せられたスピーチのひとこまである。発言者はこのデモを主催した「新社会運動」の代表である桜田修成氏。
この日のデモに集まった各団体は、「行動する保守」とも呼ばれる。街頭での宣伝やデモ、署名集めや募金活動といった市民運動的なスタイルを取るのが特徴の右派系グループだ。代表的な団体が「在日特権を許さない市民の会(在特会)」である。
「朝鮮人を叩き出せ。竹島を取り戻せ。日韓断交を実現するぞ」
「殺せ、殺せ、朝鮮人」
この日、大久保公園を出発したデモ隊は、コリアンタウンの周囲を、このような罵声を発しながら一周した。
先導車両は「ゴキブリペプシマット」と彼らが呼ぶ、落書きされた「太極旗」(韓国旗)を引きずっている。彼らが掲げたプラカードや横断幕には「良い韓国人も悪い韓国人もどちらも殺せ」「害虫駆除」などと書かれていた。プラカードを持った人々はカメラを持つ私に向かってそれを掲げ、得意そうに笑った。
■中学生に「虐殺するぞ」を叫ばせる
2月24日大阪鶴橋。この西日本最大のコリアタウンで、「日韓国交断絶国民大街宣 in 鶴橋」と称するデモと街宣が行われた。
鶴橋駅前の街宣では、女子中学生がマイクを持って次のように叫んだ。
「まず日本人の方に聞きたいです、ここにいる『チョンコ』が憎くて、憎くてたまらない人は何人いますか?」
「もう(朝鮮人を)殺してやりたい。みなさんもかわいそうやし。私も憎いし、死んでほしい。『鶴橋大虐殺』を実行しますよ」
思想や言論の自由はあるとはいえ、中学生にこのような発言をさせるのは、一種の虐待に当たるのではないのか。私自身、中学生の息子がいるので、とてもつらく思う。それと同時に、周りにいた大人たちがはやし立てていたことに憤りを覚えた。
このような聞くに堪えない言葉が発せられる「差別・憎悪扇動行動(ヘイトスピーチデモ)」が、東京・大阪などでで、公然と警察と行政の許可のもとに毎週のように行われているのだ。
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■差別反対の「対抗街宣」広がる 国会議員も動く
公然化した「差別・憎悪扇動行動」に対し、反対の動きが共感の輪を広げている。東京・新大久保では、排外デモ後に商店街で暴言を吐いて店舗や韓流ファンの日本人に嫌がらせをする動きに対し、抗議活動が行われるようになった。また「チナゲチネヨ」(仲良くしよう)などと書かれたプラカードを無言で掲げ、排外主義に「NO」を突き付ける行動が広がった。
大阪・鶴橋では、在日コリアンと日本人が一緒に立ち上げた「友達を守る団」が、差別反対のプラカードを掲げたり、商店街での嫌がらせ行動を食い止めるための警備活動が行われるようになった。
2月以降、腰の重かったマスメディアも、この異様な「差別・憎悪扇動行動」を取り上げるようになった。韓国や中国のメディアもこの排外デモを報じている。
また3月14日には、有田芳生参院議員らにより「排外・人種侮蔑デモに抗議する国会集会」が行われ、署名が東京都公安委員会に提出されるなど、この深刻な「差別憎悪扇動行動」が社会問題として認識され始めた。
このような動きに伴って「在特会」側らのグループからは、これまでのような「死ね」「殺せ」といった脅迫的で悪質・過激な言葉が、スピーチやプラカードから消えつつある。
3月31日、大阪の鶴橋駅前では「在特会」ら約40人が差別排外街宣活動を行ったが、その横で市民ら200人が「日本・コリア友情のキャンペーン」街宣活動が行われ、「在特会」らは反発する市民に包囲されたかたちとなった。
これまで「在特会」らの活動については「相手にしない方がいい」「放置しておけばいつかは消える」と言われ続けてきたが、その結果が悪質化、過激化につながったように思う。一番の問題は差別への無関心ではなかったのか。
31日の鶴橋の駅前では、ある在日コリアンの青年が「大阪に差別はいらない」と書いたプラカードを掲げた。大阪はもちろん、この日本に、世界中に差別はいらない。ひとりひとりが、心の中にそう書いたプラカードを掲げることが必要ではないだろうか。
リ・シネ(ライター)