ゲスト | 阪口徳雄さん(弁護士、政治資金オンブズマン共同代表) |
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パーソナリティ | 石丸次郎(ジャーナリスト) |
テーマ | 橋下大阪市長の特別秘書の情実採用疑惑 |
>>アーカイブ >>サマリー >>取材レポート |
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05:38 小出裕章ジャーナル/311を振り返って
15:23 橋下市長の特別秘書の情実採用疑惑
30:04 橋下市長への取材レポート
44:16 監査請求の今後・マスコミの報道姿勢
第11回は、弁護士で政治資金オンブズマン共同代表の阪口徳雄さんにおいでいただきました。パーソナリティは石丸次郎。
テーマは橋下徹大阪市長の特別秘書・奥下剛光氏の情実採用疑惑。奥下氏は橋下氏の後援会幹部の子息であり、この問題をめぐっては市民79人が奥下氏に支払われた給与、手当の返還などを求めた住民監査請求の申し立てを行い、阪口さんは弁護士の立場からサポートしました。
条例を制定してまで奥下氏を採用したことについて、阪口さんは「奥下氏採用ありきの条例。試験もなしに特別秘書として採用することで、パーティ券をあっせんなどした後援会幹部への“恩返し”ができると思ったのだろう。実に低俗なやり方だ」と批判しました。
また取材しているライターのリ・シネさんが、この問題の問い合わせへの市秘書課の回答や市役所内でのぶら下がり会見で橋下市長への直接質問した内容を音声を交えてレポート。
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その中で、勤務実態が不明瞭であることについて「特別職だから」との回答に終始する橋下市長。阪口さんは「特別職に決まった勤務時間がないからといって、勤務内容の記録がなくてよいことにはならない。話のすり替えだ」と指摘。
またマスコミ各社がこの問題についてほとんど報じないことについて、「市長から取材拒否されるのを恐れてか、この問題に関しては特に腰が引けている」と厳しく断じました。
■関連資料(PDF)
住民監査請求書
公開請求に対する大阪市の「不存在による非公開決定通知書」
「橋下徹後援会の政治金収支報告書」 2008年度分
「橋下徹後援会の政治金収支報告書」 2009年度分
「橋下徹後援会の政治金収支報告書」 2010年度分
京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんによるレギュラーコーナー「小出裕章ジャーナル」では、東日本大震災と福島第一原発事故が発生した2011年3月11日の様子について。
仙台空港へ津波が押し寄せる映像を見た小出さんは、「少し離れたところに女川原発があり、大変不安だった。東北地方の太平洋沿岸には原発が林立しており、容易ならざる状況になっていることを知った」と振り返りました。
特別秘書奥下氏の疑惑を橋下市長に直撃(リ・シネ)
「じゃあ、国会議員は全部、勤務実態を出してますか?出してないでしょう。『特別職』というのは勤務実態がないんです」
特別秘書の奥下剛光氏の勤務実態を問う記者に対し、橋下徹大阪市長はこのように答えた。国会議員、あるいは議員秘書と、橋下氏自らが条例を作って採用した大阪市の特別秘書をひとからげにした発言だ。長らく「政治とカネ」の問題に取り組んできた弁護士の阪口徳雄さんは「すり替えだ」と憤る。
今年2月13日、大阪市民79人が、橋下市長に対して、奥下特別秘書の問題に対して住民監査請求の申し立てを行った。その内容は、
- 不当な条例によって採用した特別秘書に支払った給与、手当、賞与などの全てを秘書から返還させる。
- 仮に条例が不当でなかったとしても、特別秘書が大阪市の公務に従事していなかった間の給与、手当、賞与の相当分を返還させる。
- 特別秘書に対して、今後、給与、手当、賞与など一切の費用の支給をやめる。
以上の3点であった。阪口さんはこの申し立てを弁護士の立場からサポートした。
弁護士の阪口さんが共同代表を務めるNGO「政治資金オンブズマン」は、昨年11月に奥下特別秘書の待遇と勤務条件について大阪市に情報公開請求した。市が明らかにした奥下秘書の給与は月額35万円余り。それに手当が加算される。
そして賞与は、採用からわずか4カ月後の夏のボーナスは満額とも言える80万円余りだ。また昨年末の衆議院の選挙期間中は休職扱いとなっていたにもかかわらず、冬のボーナスでは74万円余りが支払われている。年間で600万円近い。
阪口さんは次のように指摘する。「600万円は課長級の給与。本来は内規で定まっているはずの勤務内容がまず定まっていなかった。特別職であっても、秘書課の職員であるため市役所内部の資料にどんな仕事に関与したのか文書がなにかしら残るはずだが、2012年2月1日から10月末までの期間、一切それはなかった」
つまり、奥下氏が仕事をした痕跡が市役所内に公式な文書としてまったく残されていなかったというわけだ。
奥下特別秘書はどんな仕事をしているのか?橋下市長に直撃すべく、ラジオフォーラムは、3月11日大阪市役所を訪れ、まず次のような質問をぶつけた。
「2月13日に市民が、奥下特別秘書の問題について、住民監査請求をしました。その日の会見で、『条例を作って採用したので問題ない』とお答えでしたが、奥下さんは、昨年はタイムカードの記録もない、業務内容の記録もありませんでした。選挙期間中には維新の仕事を手伝っていたのではないかとの疑惑もあります。この件についてどう考えますか」
橋下市長は「『特別秘書』は『特別職』ですから、勤務時間の概念がありません。24時間、365日、超過勤務手当もない」と即答。
阪口さんは、この橋下市長のコメントについて「勤務『時間』は決まってないとはいえても、勤務『実態』はあるもの。そこをすり替えている。客観的に奥下氏が大阪市の会議に出席したと、もしくは他の会派との調整に参加したとの文書があってもいいはずだが、それもない」と切り捨てる。
また、橋下市長は、特別秘書が必要だとして「『特別秘書』を問題視するなら国会議員の秘書をもっと問題視すべき。申し訳ないけど新人の国会議員より僕の方が仕事量は多い。それに比べれば効率的にやっている」と述べた。
これに対し阪口さんは「大阪市長の『特別秘書』を国会議員と比較するのもすり替え。比較するなら同じ政令指定都市の横浜市などが妥当であり、横浜市には『特別秘書』は設置されていない」 と指摘している。
就任以来、財政難を理由に大阪市職員の給与カットを進める橋下市長。全国的にも注目を集める“改革の旗手”を演じながら、自分が条例まで作って採用した奥下特別秘書の働きぶりについては、不明瞭な点が多いといわざるを得ない。
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「奥下氏が後援会の有力者の息子だから、特別秘書に採用したのではないのですか?」3月11日に大阪市役所で行われた会見で、私は質問した。
「全然問題ない。『特別職』だから。秘書としての能力が特に優れていた、それでいいじゃないですか」橋下市長は憮然とした表情でこう答えた。
記者「勤務実態の状況を可視化させることはできないのですか?」
橋下市長「しませんよ、そんなこと。『特別職』なんだから」
「特別職だから」を橋下市長は連発する。特別職は、勤務実態がなくてもいいものなのかと、疑問に思った。
奥下特別秘書はどのような仕事をしていたのか? 私は、市長への取材に先だつ3月8日、市役所秘書課に直接問い合わせをした。ます、奥下剛光特別秘書への取材を申し込んだが、多忙のためと断られた。次いで、同秘書課へも取材を申し込んだところ、文書で回答したいとのこと。そのため、質問状を送付した。内容は次のとおりだ。
- 奥下剛光特別秘書の勤務状況について、現在、勤務内容や出退勤タイムカードは記録されていますか? されているとすれば、いつからされるようになりましたか?
- 衆議院選挙のあった昨年12月、奥下剛光特別秘書は勤務していましたか? それとも休職されていましたか?
- 奥下剛光特別秘書は大阪市の職員としてどんな仕事をしていますか?
これに対する秘書課の回答は次のとおり。
- 市長の秘書の職は地方公務員法第3条第3項第4条に規定された特別職にあたり、同法に規定のある勤務時間その他の勤務条件についての適用はなく、出退勤時間は記録しておりません。また、秘書は市長に随時、業務報告を行い、意思疎通が図られていることから、日々の勤務内容は記録しておりません。つまり、タイムカードなどに出退勤時間は記録されておらず、秘書の動向を把握しているのは市長だけということになる。
- 本人からの申し出により、平成24年11月16日~平成24年12月16日の間、休職としておりました。
- 中央官庁、各政党、市会各派、その他市長からの特命事項に関わる連絡調整を主たる業務としております。
先の橋下市長のコメントについて、阪口さんは次のように批判する。「副市長も『特別職』にあたりますが、副市長の勤務実態については決裁した書類などが多数見られる。ところが奥下特別秘書についてはこれが一切ない。こんなもん、誰が考えても信用できませんよ」。
奥下剛光特別秘書の採用そのものもが「不当な条例による採用」だと阪口さんは指摘し次のように述べる。
「もともと、この条例の制定も採用ありき。本来は大阪市の職員なら試験が必要だが、特別秘書ならそれが必要ない。また、後援会幹部の息子であるから恩返しができる。実に低俗なやり方で、違法であり不当。だから支払われた給与を返還するように求めた」
前述のとおり、奥下特別秘書は、政治団体「橋下徹後援会」会長の奥下素子さんの息子なのである。
阪口さんは「『橋下徹後援会』が4年間に集めた資金は1億2,500万円。主にパーティ券斡旋で集めています。そのうち奥下一族の4名で3,500万円、3割近くになる。後援会を支えているのは奥下一族であり、その恩返しのために奥下剛光氏を雇ったのではないか」と情実縁故採用の疑いを指摘している。
橋下市長は今や、第2野党である「維新」の共同代表であり、もちろん大阪市のトップでもある。政治的に重要なポジションにいる人物であることは間違いない。情実人事の疑惑をぬぐうべく、奥下特別秘書の採用の経緯、勤務実態について、速やかに明らかにし市政の透明性を高めてもらいたい。
リ・シネ(ライター)